「介護」を学びながら考える「日本語教師力」

ホームヘルパー2級のテキスト

ホームヘルパー2級のテキスト

「定住外国人のための『介護の日本語教育』にしっかりと携わりたい」という思いから、ホームヘルパー2級の勉強を始めました。それは、本を読んだり、ただ話を聞くだけではなく、とにかく自分自身の目で、耳で、介護現場を知りたいと考えたからなのです。「現場ではどんなことが行われているのか」「もし日本語力が不足している外国の方が社会参加するとしたら、どんな点をサポートしたらいいのか」、そんなことを現場の空気を吸いながら、感じ取りたいと思いました。

勉強を始めて3ヶ月になりますが、その面白さは増す一方です。「こんなことも知らなかったんだ」と生活の知識面の不足を反省したり、介護される側に立つことで、さまざまな気づきがありました。

〇車椅子に乗って見ると、「周囲の世界」が違ってみえること

〇車椅子を押してもらう時のスピード感と、自分が押す側になった時のスピード感の違い

〇排泄介助や入浴介助をしてもらっている時に、どんな「声かけ」をしてもらえるかによって、安心感が違ってくること

福祉理念とケアーサービスの意義に関する講義では、「これはまさに日本語教育における教育理念や学習者との関わり方」ということの原点だと強く思いました。今ではすっかり定着している福祉理念における、ノーマライゼーションという考え方は、すべてのことに繋がります。また、今週の講師の言葉はとても胸に響きました。

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その利用者さんが「一番輝いていた時代のこと」を思い出してもらい、話してもらうことがとても大切なんですね。それを思いだしてもらうことで、「問題」が起こった時の解決策が見つかることがよくあるんです。でも、実は、以前はしていなかったのですが、最近は必ず入所時に、「ご自分の一番輝いていた時代のこと」を話してもらいます。その利用者さんが言えない時には、家族の方に語っていただきます。ビジネスマンは現役時代だったり、あるご婦人は子育てをしていた時代だったり、ある方にとっては少女時代だったり、人それぞれなんですね。その個別性を大切にすることが第一です。

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これは、日本語教育で学習者一人一人を大切にし、それぞれの学びを尊重することと同じだとつくづく思いました。

4冊の本を読み、3回レポートを提出した後、7回コースのスクーリングが始まりました。朝の9時から5時半までびっしり講義や実習です。

第2回「介護技術Ⅰ(心構え、健康管理)」
    「介護技術Ⅱ(体位変換と褥瘡への対応)」

第3回「介護技術Ⅲ(衣類着脱)」
    「介護技術Ⅳ(移乗・移動・歩行介助)」

第4回「介護技術Ⅴ(排泄)」
    「介護技術Ⅵ(入浴)」

といった流れで進みます。スクーリングが終わると、今度は、「現場での介護実習」「在宅サービス提供現場の見学」「ホームヘルプサービス同行訪問」が待っています。そして、これを全てクリアした後、9月の修了式を迎えることになります。

最後に、教科書の中の一節を紹介したいと思います。私は、「介護関係者」ではなく、「日本語教師」と置き換えながら、読み進めました。

「この仕事は、人間的な仕事としての魅力が数多くあります。さまざまな人との出会いは無関係な関係を、とても大切な関係につくり上げる不思議さがあります。また、人それぞれの固有の人生に触れる心ひかれるおもしろさがあります。そして、その人の人生の重み、深さは尊敬に値し、生きることの偉大さ、命の尊さを再考させられます。これらを感じとり、大切に思うことが、ホームヘルパーとしての第一歩ではないでしょうか。ホームヘルパーに専門性が求められていますが、利用者の一番身近な存在として豊かな感性を磨き、利用者の良き理解者になるところに専門性を見出すことも必要だと思います。(『第一巻 援助の基本視点と保険福祉の制度』p.16)」

 

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