留学生が「ミニドラマ撮影」を体験

11月も中旬となり、大学や専門学校の入学試験も佳境に入りました。その進学先はさまざまですが、毎年日本のテレビや映画を見て「日本の技術を学びた い」「日本の映画製作の考え方を知りたい」と、放送関係の分野に進学したい学生が大勢やってきます。そこで、放送関係を希望する学生のために「ミニドラマ 撮影体験」というテーマで特別授業を計画しました。実施してくださるのは、東放学園のスタッフ3名。ここで感動的だったのが、東放スタッフの1人が、20 年前のイーストウエスト日本語学校の卒業生だということです。こうやって卒業後も日本に残り、大活躍している卒業生の姿を見るのは、本当に嬉しいことで す。

専門学校スタッフによる説明

まずは、台本が配られ、「柱/ト書き/科白」などについて説明。次は、テレビ番組を作るスタッフに関して「制作/製作技術/ポストプロダクション/美 術」に分けて説明がありました。ミニドラマのタイトルは、「模擬面接」。面接官役と監督は専門学校のスタッフですが、受験生役、撮影、照明、録音、助監督 はすべて留学生が務めました。初めてプロが使うようなカメラ、照明版、ガンマイクを手にして、彼らは興味津々です。

面接官「え〜、それでは今の時点で良いのでやってみたいことを教えてください」
学生1「役者です」
面接官「なるほど。では、突然ですが、ここで演技をしてもらいます」

戸惑った表情で目を見合わせる学生2人。

面接官「前日に冷蔵庫に入れておいた大好きな食べ物が、次の日開けた瞬間、なかった時の表情をお願いします」
学生1「このクソチビ、ケンイチ!! 私のプリン、食べたの? あんた、何やってんの、一体!」

モニターで確認

韓国のAさんの熱の籠もった演技に、笑いをこらえていた学生達は「ハイ、カット」の掛け声を聞くやいなや、どっと噴き出し、割れんばかりの拍手が起こりました。

本来は、編集までやってみる予定でしたが、時間切れのため、後日専門学校で編集したものを届けていただくことにして、いよいよ最後の「質問タイム」となりました。1つ面白いやり取りをご紹介しましょう。

留学生「これまでで一番印象に残っている、良かった映像は何ですか?」
東放スタッフ「う〜〜〜ん。難しい質問ですねえ。たくさんあって。でも、やっぱり『家族ゲーム』の、あの横長の食卓で食事をするシーンは忘れられないで すねえ。あんなふうに、言葉ではなく、シチュエーションで<ぎこちない家族>を描き出してしまうってすごいな、と思ったんですよね」

実は、このクラスの学生たちは先々週、授業で「家族」について考えるにあたり、森田芳光監督の『家族ゲーム』を見ていたのです。20年以上前、『家族 ゲーム』という映画が初めて放映された時、日本のあちこちで話題となり、大きな衝撃を与えました。しかし、それが今は「ホテル家族」に始まって、「個食・ 孤食」という言葉まで生まれる社会になってしまいました。留学生たちも大きな驚きをもって『家族ゲーム』を見たようです。

韓国男性「そんな場面、変です。違和感があります。気持ちが悪いですよ」

台湾女性「絶対にこれからだって、こんな食事の姿、考えられないです。今はまだ家族が忙しくて、ばらばらで食べることはあるけど、お母さんが作ってくれたものを食べてます。自分たちだって、そうすると思います」

韓国女性「こんな状況、どう考えても、よく分かりません。家族がこんなふうにまっすぐ横に並んで座っているなんて・・・・・・。それに、みんな違うものを食べているなんて、考えられません」

『家族ゲーム』はいろいろな意味で、留学生にさまざまなことを考えさせるきっかけになりました。彼らはスタッフの話を最後まで真剣に聞き入っていました。

撮影中

「小説は言葉で表現しますが、映画は映像で言葉以上のことを語ってくれるんですよ。だから、そのシーンで、自分は何を撮りたいのか。何を表現したいの か、それを考えて撮影することが大切です。面接を受ける学生の緊張感を出す時に、小刻みに震える手を撮るのか。それとも、不安げな目をアップして撮るの か。それは全て作る人の感性です」

日本留学を経験した留学生が、外側からではなく「生活者としての視点」で日本社会を見つめ、描いていってほしいものだと強く思いました。そうした小さな積み重ねが、国と国との理解を深める大きな力となっていくのではないでしょうか。

カテゴリー: ワイワイガヤガヤ日本語学校 パーマリンク

留学生が「ミニドラマ撮影」を体験 への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 「ミニドラマ撮影」を体験して 協同性を大切に | 日本語教育<みんなの広場>

コメントは停止中です。