留学生の「ミニコント作り」を生んだ落語鑑賞会

 今年の落語鑑賞会は、「饅頭こわい」と「親子酒」でした。これまでは「なかの芸術小劇場」で実施していたのですが、少しでも大勢の学生に聞かせたいという思いから、今年は大きなホールを借りての実施となりました。そのお陰で午前にある12クラスすべての留学生が参加することができたのですが、中には、「もっと狭い所で、近い距離で聞きたかった」という意見も聞かれました。それは、2年コースに在籍し、昨年アットホームなまさに演芸場のような雰囲気で落語を聞いた学生たちでした。理想の形を取るか、より多くの人たちに体験してもらうことを取るか、いつもながらの難しい選択です。

落語鑑賞会の始まり、始まり(以下すべて撮影筆者)


 やはり今年も一番の人気は「小噺」です。「猫の名前」がくるくる回って、最後に「ねこ」になる話<虎→竜虎→雲→風→壁→鼠→猫>や「鳩の糞」の話に大笑い。特に、今年新作発表の「携帯電話の待ち受け画面」は大人気でした。
 
 「これ、ウチの犬。可愛いでしょ」
 「うん、かわいいねえ」
 「私は、猫。かわいいでしょ」
 「ホント、かわいいわねえ~~~」
 「ウチは、小鳥。あ、お宅のはカバ!」
 「違いますよ。これ、ウチの主人ですよ」
 
 今年は、留学生が自分自身の日本社会での経験をネタに「ミニコント」を楽しむ光景が見られました。その多くは、言葉を聞き違えての「困った経験」から生まれたコントでした。いくつかご紹介しながら、作った留学生がどんな経験をしたのか「生の声」もお届けすることにします。

着物の着方について説明をする桂扇生さん


 【ミニコント(1)】
 A: ミリさん、大学の専攻は何?
 B: じゅうきょう学科。
 A: 宗教??? ミリさんは何教なの?
 B: 私、特にないけど、仏教かな? いくちゃんは何?
 A: 私? 私も特にないなあ~~~。で、ミリさんは大学で何を専攻したの?
 B: あ、じゅうきょう学科でインテリアを専攻してた。
 A: わかった。宗教じゃなくて、住居だったんだね。
 
 <留学生(韓国・女性)の声>
 これは本当にあった話です。大学の面接の時の面接官との会話が元になって作ったコントです。面接の先生に「韓国での専攻は何か聞かれましたが、面接官が「住居学科」を「宗教学科」と聞き間違えてしまったのです。今でも忘れられません。「発音」は大切ですね。これからももっと勉強したいと思います。

楽しそうに聞いている留学生たち


 【ミニコント(2)】
 * 駅のアナウンス
 「次は東京、東京でございます。お出口は左側でございます」
 
  えっ? オレンジは左側? どこだろう? オレンジ色のドアはないよ。どこにもないよ。どうしよう。降りられないよ。困ったねえ~~~。
 
 * もう一度駅のアナウンス
 
 ああ、オレンジじゃなくて、お出口だったんだ! これで、東京で降りられるね。
 
 <留学生(台湾・女性)の声>
 日本に来て初めて電車に乗ったときの経験です。日本語はその時下手でしたから、いろんな言葉を聞き間違えました。こんな経験はしょっちゅうでした。今は、もう慣れましたけど~~~。
 
 
 【ミニコント(3)】
 * 駅でアナウンス  千葉行きの電車がまいります。黄色い線まで……。
 
 A:えっ何? 黄色い線までおしゃべり? 今、なんて言った?
 B:黄色い線でおしゃべり? どうしゃべるって言うの?
 A:あ、そうだ。黄色い線の前まで、前でおしゃべりするってこと!
 
 <留学生(韓国・女性)の声>
 これは、私が本当に経験した話です。日本に来たばかりの時、電車に乗って友達と居酒屋に行く時のことです。「お下がりください」がどうしても「おしゃべりください」と聞こえてしまったんです。「危ないですから、黄色い線の後ろでおしゃべりしてください」だと本当に思ってしまいました。
 他にもコンビニで「お箸、つけますか」と聞かれたとき、「大丈夫です」と言って断ったのに、そのすぐあとで「あの、箸、お願いします」と言いました。その時コンビニの人は「えっ?」って顔したんですけど、なぜかはわかりませんでした。でも、日本語学校の授業で「丁寧にするために<お電話、お金、お箸> になることを知って、ほんとうにびっくりしました。その時、「コンビニでのこと」を思い出して、急に恥ずかしくなりました。
 
 また、中には「言葉遊び」を楽しんでいる人たち、「なぞなぞ作り」の感覚で仲間とワイワイやっている人もいました。

 【言葉遊び(1)】
 A:ね、今の私の歌った歌、安室奈美恵の声と似てたんじゃない?!
 B:ま~ね。
 
 【言葉遊び(2)】
 A:あれ、虫だ! 怖い~~~。
 B:虫? ああ、無視したらいいじゃない。
 
 【言葉遊び(3)】
 A:ぼく、たまごが好き。
 B:あ、そう。

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