留学生体験「宝塚、水商売……見方が変わった」

投稿者 李珍花(韓国)イーストウエスト日本語学校
2008年7月4日投稿

 実際に経験してみることで、前の考え方が変わる事があります。短い時間でも日本で生活してみてそういう経験がありました。

 日本に来てもう1年3ヶ月になります。来る前から日本にいるうちにはただ日本語の勉強だけではなく、いろいろ経験してみようと思っていました。特に昔からミュージカルや舞台、コンサートなどの公演を見るのが大好きでしたので、日本の公演文化にできるだけ触れてみたかったのです。

 しかし、実際来てみたら、留学生という状況ではいろいろな意味で余裕がなくて、なかなか見に行く機会がなかったのです。が、せっかく日本にいるのに日本の伝統的な文化や、日本でしか見られない演劇などの公演を見ないのはとてももったいない事だと思って、すこし無理をして今までに歌舞伎と落語、そして宝塚を見ました。3つとも、どれも見て良かったと思ったのですが、その中で一番印象的だったのは宝塚でした。

 実際に宝塚を見る前、パンフレットや宝塚に関するニュースをみる機会があったのですが、「女性ばかりの歌劇」に興味を持ちながらも、その派手すぎる衣装やメイクに少し拒否感があったのは事実です。歌舞伎や落語のような日本の伝統的な文化でもありません。観客の多くが女性で、猛烈にはまっているということもよく理解できませんでした。しかし、宝塚は日本の独特な文化の一つだと聞いてチャレンジという感じで見に行ったのです。そして、実際に見た後、最初の拒否感は感動と共感に変わりました。宝塚にはまる女性たちに関しても「あ、なるほど」と思いました。

 もちろん、歌とダンスなどステージ上のパフオーマンスも素晴らしかったのですが、何よりもトップスターと呼ばれている男役のカッコ良さがポイントだったのです。男役の台詞と仕草はまるで少女漫画にでるような、女性が理想的に思っている男性、そのままだったのです。それを見て観客たちは夢を見ているんだなと私は思いました。ただ一回だけみただけのですが、それがすごく分かりました。自分も知らないうちに「あ、かっこい」と思いながら見ていたからです。

 宝塚に関して自分なりにこうだと思っていたマイナスのイメージが、実際にその舞台を見ることで良い方向に変わったので、より印象に残ったのかも知れません。「実際の経験によって理解できた」それがすごく嬉しかったのです。それに日本についてもっとよく知ることができたのも嬉しかったのです。

 日本に来た本来の目的は日本語の勉強ですので、日本語を習うにつれ、最初は聞き取れなかった日本語がだんだん聞き取れるようになったり、難しい漢字を読めるようになったりすると、やはり一番嬉しいです。しかし、宝塚の印象が変わったように、それまでは知らなかった日本のこと、もしくは誤解していたことが、経験によって理解できた時の喜びも同じぐらい大きいと実感しました。

 考え方が変わるという点では、他のことでよく似た経験をしたことがあります。それは日本に来たばかりの時のことでした。ホストやホステスの人たちがテレビで、どうすればナンバー1になれるか、その秘訣を語っているのを見ました。その時、私はカルチャーショックと言えるぐらいの驚きを感じたのです。韓国にももちろん同じ仕事があります。でも、実は陰の仕事と考えられていて、テレビに出るということは考えられないことだったのです。私自身、韓国で生まれ育ち、社会のそのような考え方を疑うということはありませんでした。

 テレビを見た後、周りの日本の友だちにどう思うか聞いてみたり、同じようなテレビの番組を興味をもって見たりしました。いわゆる「水商売」について、日本では、いろいろな職業の中の一つとして見られて、それほど偏見を受けていないことに気づきました。またその仕事をしている人たちも自分の職業にプライドを持って、もっと仕事ができるように頑張っているように見えました。自分が今やっている仕事に関してプライドをもって頑張るところ、それを認めてくれる社会はいいなと思います。こういう風に自分の考えが少しずつ変わっていくのに自分自身でも驚きです。

 これからさらにどのぐらい日本にいるか、まだはっきり決まっていませんが、ここにいる間に、もっと積極的に日本の文化や生活に触れて、いろいろ感じたいと思います。これまでに持っていた印象や考え方が、また変わるかも知れない、それがとても楽しみです。そしていつか韓国に戻った時、日本で経験したこと、感じたことを、国の人たちに伝えることができたらと思います。

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