「おにぎり」で異食文化交流を愉しむ留学生

 『おこのみっくす』(地域密着・生活共感情報&マガジン)3月号で、イーストウエスト日本語学校で学ぶ6人の留学生がレポーターとして活躍したことは、先日ご紹介しました(http://nihongohiroba.com/?p=443)。今日は、その直後に行った「おにぎり中身当てクイズ」についてお話ししたいと思います。
 
 2月のある日、『おこのみっくす』の取材チームの方々が、「にわかレポーター」を務めた留学生6人に「おにぎり当てクイズ」という<ユニークな仕掛け>を持って学校に見えました。抱えて来た包みを開けると、中からたくさんのおにぎりが顔を出しました。
 Aコースは、留学生それぞれの出身国の具を入れたおにぎりを食べ、「おにぎりの中に入れられている具」を当てるというクイズです。そして、もう1つのBコースは、日本の具で作られたおにぎりなのですが、その具が変わっているのです。よく見かける、梅、鮭、明太子……といったものではありません。意外なモノが入っているのです。

アンナさんは何やらスタッフに聞いているようです。撮影・嶋田和子、以下同じ


 Aコース「出身国の具を当てるクイズ」のトップバッターは、アメリカ出身のジェクリンさん。出てきたおにぎりの中身は、ゆでたジャガイモ、コーン、スパム(ランチョンミート)にチーズ。それをバター&バジルで味付けしたご飯で握ったおにぎりだったのですが……。ジェクリンさんは、いつもスーパーで買っているおにぎりとは違った味にびっくり。少しずつ何度も口に入れながら、やっと答えを探し当てました。
 
 タイのジョックさんは「トムヤンクンが入ってる!」と一発で正解です。この「トムヤンクンおにぎり」は、エビと刻んだフクロダケをまぜたご飯で作られたものでした。お相伴にあずかった他の留学生たちも「美味しい!」と人気ナンバーワンの「創作おにぎり」でした。
  「これって、売り出したらいいかもしれない」
  「ジョックさん、タイに帰ったら、お店やってみたら」
 といった楽しい会話も聞かれました。こんな「発想の転換」「自由な食材の組み合わせ」から、すてきな新しい商品が生まれてくること間違いなし! そこには多文化の視点が大切なのだと改めて思いました。

ジョックさんの答えは「トムヤンクンおにぎり」です


 ロシアのおにぎり「ビーツ&ニシンの酢漬けおにぎり」を当てるのはアンナさん。最初は「う~~ん、なんか変な味……」と、目をぱちくりさせながら、必死に考えていましたが、やっと分かって、にっこり。
 
 そして、意外だったのが韓国「トッポギおにぎり」でした。回答者のチェさんの答えはなんと「ビビンバ」だったのです。きっとトック(餅)があまりに細かく切って混ぜ込まれていたので、分かりにくかったのでしょう。正解を知ったチェさんは、残念がることしきり。トッポギとは、「韓国餅の甘辛ソース煮」ですが、韓国ではとても人気のある餅料理で、屋台で買って食べる姿がよく見られます。今回の「トッポギおにぎり」は「トッポギ用の細長いお餅」を細かく切って、牛肉、お葱を加えて市販のトッポギソースで煮込んで作ったと『おこのみっくすvol.3』には紹介されています(p.22)。

 5つ目のおにぎりは「シンガポール:海南チキンおにぎり」で、クイズに挑戦したのは李文清さん。このおにぎりは難易度があまり高くなかったようで、余裕の回答。「あっ、これ『チキンライスショウガ入りおにぎり』ですね。だけど、色がちょっと……。シンガポールだったら、黄色じゃないですよ」
 
 そして、最後は台湾の「ピータンと蒸し鶏おにぎり」でした。ウーさんは、なかなか分からず、諦めてしまいました。中身を聞いて「えっ? そうなんだ……」。ピータンが入っているとは、意外だったようです。
 
 次にBコース「日本の具が入ったおにぎりのクイズ」です。用意されたのは「チーズおかかおにぎり」「天むすおにぎり」「梅しそおにぎり」の3種類でした。ここでユニークな答えが飛び出しました。ジョックさんが「天むすおにぎり」を「たぬきおにぎり」と回答したのです。実は、ジョックさんは「天かす」という言葉を知らなかったのです。「う~~~ん、ええと、たぬきうどんの上に乗っかっているもの。だから、『たぬきおにぎり』にしよう」と思ったのだそうです。この日本の具当てクイズは、ほとんどの人が正解でした。

6人の答えが勢ぞろいしました


 翌週2人の留学生が感想文を私のところに持ってきてくれました。
 
■ジェクリンさん(アメリカ出身・女性)
 食べものが好きな私にとってとてもたのしい時間だった。各国の素材で作ったおにぎりと日本のおにぎりを比べるのがおもしろかった。はじめはチーズを入れたおにぎりがアメリカのほうのおにぎりだと思ったのに、実は日本のものでいろいろな文化を受け入れて自分のものにする日本の断面が覗けた。
 アメリカの食材はジャガイモとスパムのミックスサラダで最初口にしたとき、びっくりしたが、案外とご飯と相性がよくて美味しかった。サラダとあわせるためにご飯にもいろいろ味をつけてさらに美味しくなったような気がした。美味しいものなら東西を問わず通じると思った。
 タイのおにぎりはトムヤンクンをお湯代わりに入れて炊いたご飯で作ったものだったが、ご飯を炊くときスープを入れるのは私にとってめずらしいものでおもしろかった。おにぎりを食べながら作るためにかなり手数がかかったことが分かってありがたかった。今回の経験でいろいろ日本のことを知るようになって楽しかったし、国に帰ってもいい思い出になると思った。
 
■呉佩頴(台湾出身・女性)
 今回のイベントは、最初はおにぎりを自分で作って、「中身当てクイズ」をするのだと勘違いしてしまった。台湾のおにぎりは手作りで、日本より大きくて、そして中身も全然違う。朝食店でよく食べられる人気の朝ごはんだ。しかし、日本では台湾の食材がなかなか見つからない。台湾のおにぎりを作ると思ったので、材料を買いに大久保の店まで買いに行ったけれど、やはり同じようなものはない。だから、最後は自分で簡単な茶葉蛋(お茶漬け卵)だけ作って学校に持っていった。
 スタッフが来ておにぎりを並べ始めた。それで、皆がそれぞれの国の食材で作ったおにぎりを食べて「中身を当てるクイズ」だと気付いた。
 皆が自分の国のおにぎりの中の食材がすぐ分かった。逆に私はなんども間違って、少し落ち込んだ。ピータンは全然浮かばなかった。ご飯の味は台湾の伝統料理-粽子の味と似ていると思った。
 おにぎりは多分アジアの地域の特産物と思っていたが、アメリカやロシアなどの食材で作るおにぎりを初めて食べた。ちょっと微妙だと思ったが、食べたあとは本当にうまい。特にタイのおにぎりは大人気! トムヤムクンとおにぎりはぴったり。
 今回のイベントですごく勉強できた。おにぎりというものは台湾や韓国などの国でも同じ名前が付くものがある(例えば台湾は飯?と呼ばれる)けど、味や形などやはり違うと気付いた。国によって、味や形がどんどん変わっていくと思った。次は自分で本物の台湾のおにぎりを作ってみんなで食べよう! 台湾に帰ったら、また食材を日本に持って来よう!

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